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2017/11/12

野上忠興氏著「安倍晋三 沈黙の仮面」感想その5(最終回)

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今度こそ最終回だけど、その5です。(感想文中は敬称略)

藤原仲麻呂も、壬申の乱の敗者サイドで恵まれた政治家スタートを切ったわけではなかった(天智天皇の落胤説もあるが定かでない)祖父の不比等から必要最小限以上の反感を買わない様立ち回る処世術ももっと学ぶべきだったと思いますが、安倍晋三も祖父の岸信介が著者にも語った「押すときは押して引くときは引く」、父の晋太郎の「言いたい事を主張するだけでなく、誠実さから信頼関係を築く」バランス感覚を学んだとは言い難かった。

これまで読んできたエピソードからそれはいくつも伺え、高校時代に偏った左翼思想を生徒達に押し付けていた教師に嚙み付いた程度ならまだしも、直属の上司と後先考えないで北朝鮮による拉致問題で揉めてしまったのは拙かった。さすがに実際晋三ご本人も何とも思っていなかったわけでも無かったらしく、福田康夫が総理になってしまった場合干されるな危機感は持っていた様で、それも小泉任期満了後に伴う総裁選出馬の背景として指摘されていました。

そして実際ポスト小泉として名前の挙がった面々は晋三のほかに麻生太郎、谷垣禎一、福田康夫の4人で、彼ら麻垣康三は「軽量級で重みが無い」との皮肉を込めて呼ばれた事も初めて知った。総理の条件は当選10回、党三役1回、閣僚入り3回(その内2回は出来れば外務及び財務)それぞれ経験する事だと言われているけど、確かにこの4人を見ると・・・・・・

【この当時の麻垣康三及びその他主な重鎮自民議員の当選、党三役、閣僚各経験回数】

安倍晋三 当選5、党三役1、閣僚1
麻生太郎 当選9、党三役1、閣僚4
谷垣禎一 当選8、党三役0、閣僚4
福田康夫 当選6、党三役0、閣僚2


加藤紘一 当選12、党三役2、閣僚2
深谷隆司 当選9、党三役1、閣僚4
堀内光雄 当選10、党三役1、閣僚2
与謝野馨 当選9、党三役1、閣僚3
額賀福志郎 当選8、党三役1、閣僚4
久間章夫 当選9、党三役1、閣僚2


麻生も「女性に参政権を与えたのが失敗」失言が響いたのか、1983年に落選していなければこの時点で当選10回となっていましたが、確かに彼以外は軽量級なのは否めなかった。この4人よりももっと経験豊富な面々もいなかったわけでもなかったのですが、

加藤・・・・加藤の乱及び秘書の不祥事でもはや過去の人に
深谷・・・・2回連続で落選歴
堀内・・・・郵政民営化に反対して自民を離党中(後に復党)
与謝野・・・・2000年に落選した事がある他、派閥での亀井静香との権力闘争に敗れる
額賀・・・・2回大臣を途中辞任
久間・・・・暴力団関係者と記念撮影した事あり(後にあの失言も・・・・・)

と彼ら以上に経験ある面々が皆決定打に欠けていたのもあったのでしょう。この6人の中では、正直私は彼の祖母はあまり好きではないけど、与謝野が一番総理の可能性あったかな?また額賀も派閥内でも反対意見もあって、出馬断念を余儀なくされた様だけど、かって田中派時代から長きにわたり指示した人物を総理にしてきた平成研究会の衰退を物語っていたかのようです。4人のうち、福田は勝ち目がないと見たのか、出馬辞退して、結果は晋三が圧勝、戦後最年少の総理となり、父・晋太郎が叶わなかった夢を果たす形となりました。

ところが、現在も変わっていない様だけど、圧倒的多数な支持を得れば何をやっても良いと余計勘違いしてしまった様です。防衛庁を防衛省に昇格させたのはまだ良いし、実際は既に小泉内閣下で決定されていた政策も少なくなかったのですが、タカ派的政策を次々と実行していったのには当時の私からは強い違和感がありました。確かに拉致問題ではまだともかく部会長や幹事長としては合格点と言える実績を残せていなかった焦りもあったのでしょう。残念ながら人を見る目もあったかと言うと微妙だった様で起用した閣僚達のスキャンダルが相次いだ。松岡利勝は自殺に追い込まれたし、額賀同様茨城出身でもあるけど、絆創膏姿もネットではネタにされた赤城徳彦も14年間茨城県会議員やっていた田所嘉徳に地盤を譲らざるを得なくなり(あの世の祖父もさぞかし泣いている事だろう)、額賀の総裁選出馬に反対した一人でもあった久間も原爆発言で辞任に追い込まれた。佐田玄一郎は後に第二次安倍内閣でも起用してもらったけど、今度は女性スキャンダルで運営委員長辞任に追い込まれたのは懲りねー奴だなあと言うか・・・・・・・・結局先月の衆議院選も出馬自体余儀なくされてしまったけど、早くもグダグダになってしまっていた。

だからと言って、今でも民主党に票入れてしまったのは反省しているけど、2007年7月の参議院選挙でとうとう自民は歴史的惨敗を喫してしまった。そんな厳しい現実に直面しても、すぐ責任とって退陣しなかったのも拙かったけど、ここでついに持病の潰瘍性大腸炎が悪化してしまった。議員2選を目指した選挙活動時もなかなかトイレにいけなくて辛い思いをして、体重も12キロも激減したらしいけど、昭恵夫人には「政治家なんかやめてください」とまで言われてしまったらしい。森友学園問題にも巻き込まれてしまった最近のアッキーの言動からは正直想像つかない(苦笑)けど、いつからこんなにおかしくなってしまったのだろうか。晋三のこの持病については、小学8年生で掲載された伝記漫画の他にも民衆の敵でもパロられていた様だけど、後者については折角良い役者何人も起用したのにこんな疾病者が10万人以上いる難病を揶揄するテレビ局製作スタッフの人間性にはつくづく残念な気分にさせられます。と言うか、晋三の甥もフジテレビ社員(弟で岸家に養子入りした信夫の息子で、従兄弟に当たる寛信の息子とも歳が近いという)なのにねえ・・・・・・・・・・・・・

しかし、これまでも話してきたけど、晋三はつくづく運に恵まれた政治家です。野党議員として国政デビューしても、なかなかこれといった実績を残せなかったのが、当時の小渕恵三総理の急死による森内閣成立で閣僚経験者の就任例もあった程の重要ポストだった内閣官房副長官に抜擢され、拉致問題等をめぐる、直属の上司だった福田との確執も被害者家族の支持や世論を味方につけて一部被害者達の帰国に成功、僅か当選3回で幹事長に抜擢、衆参両議員選挙では満足な結果を残せず、イラク派兵に反対した重鎮議員の説得にも失敗して代理に降格されたと思いきや、今度は大統領制下の国では首相がやる仕事である内閣官房長官に抜擢、そして小泉の任期満了に伴う総裁選では、この時点ではあの稲田朋美は彼を推薦していなかったのも意外だったけど、福田が戦いそのものを放棄して戦後最年少の総理に・・・・・・・・・・・・・

不幸にも持病の悪化もあって一時下野しても運に見放されたわけではなかった様です。5年後の2012年9月の総裁選では現職の谷垣が出馬断念、対立候補は町村が脳梗塞、石原が親父譲りの失言癖、石破は一時自民離党歴あり、所属政党が野党転落して注目されるようになったという点でチェルシー・クリントンと似ているけど、自民の戦う貴公子、小泉次男は石破支持に回りながらも総裁返り咲きを果たした。安倍晋三、この時まだ58歳になったばかり。

3か月後には衆議院選挙で大勝し、3年ぶりの政権与党返り咲きを果たして、まずは憲法改正しやすくする為に96条の改正を目指したけど、これは間もなく頓挫しました。他の国でも例えば良く大統領の再選制限を緩和または撤廃したり、権限を強化したり等権力者に都合の良い様に改正した話を聞きますが、小林節の批判は極めて正論だと思います。天皇陛下が生前退位を望んだのも憲法改正しようとしている晋三への掣肘とも指摘されていて、サンフランシスコ平和条約が結ばれた4月28日を主権回復の日と定めるのはまだともかくとして、天皇・皇后両陛下を政治利用したのもいただけませんでした。戦後70年の総理大臣談話もその2で触れたから深い言及はしませんが、繰り返し言う通り河野談話は見直しても村山談話は見直すべきではないです。

いじってもせいぜい「植民地支配」「侵略」「痛切な反省」「お詫び」の内、「お詫び」のキーワードを削除する微修正にとどめるべきであり、結局は4つともキーワードを盛り込んだようだ。全国戦没者追悼式の天皇陛下のお言葉の意図を、例えばBBの談話室とか一部皇室ブロガーも知ったらまた皇太子ご一家共々叩くのだろうけど、戦争を知っている世代の人達が高齢化して、晋三みたいに自分に都合の良い様にしか歴史を学ばない人達が増えている等右傾化しているのだから猶更の事です。勿論慰安婦の強制性や南京大虐殺の被害者数等実際やってもいない事をやった様に、またはやったけど、実際より酷い事したかの様に言われるのは理不尽で、いい加減これからの世代の人達もツケ払わされる不幸の連鎖は断ち切らなければいけないとも思うけど、過去を美化して正当化する免罪符にはならないし、してもいけないのです。自虐史観も良くないけど、自尊史観も無能な働き者ネトウヨも発生させる等日本人を劣化させるだけで得るモノなんて無い。何度も何度もこれからも機会ある度言いますが、私は強くそうも確信しています。

日本国憲法も確かに自主憲法とは言えないでしょうし、冷戦が終わっても、今度はイスラムとか宗教が絡むテロとの戦いや北朝鮮の核開発問題等変化している世界情勢にそぐわなくなっているのも事実です。大半の憲法学者が違憲認定している自衛隊を明記するのは良いし、集団的自衛権も既存法律との整合性等も厳密に守って、明確に日本の国益に関係する範囲でのみに適用できる様にするのなら消極的な賛成はしますが、何故解釈改憲などという小難しい解決に走るのか。日本の国益よりも周辺諸国に過剰に配慮もしてきてこうした議論自体しようとせず、護憲に凝り固まった、日本特有の欠点を抱えている左翼の人達にも責任はありますが、本来こうした安全保障問題は時間をかけてでも議論し、国民にも丁寧に真摯に説明し、しっかり是非を問うべきなのです。「要領だよ、要領」のノリでなされるべきではないのです。

話は先走りながらも、昨年地元の山口で開催した、プーチン大統領との日露首脳会談もそうなのだろうと言うか、歴史に名を残したくて焦ってもいる様ですが、北朝鮮の日本人拉致問題もまた然りでしょう。しかし、拉致担当大臣も代わりすぎと言うか、いっそ北朝鮮問題に詳しい民間から起用したらどうだ?えっ?ただでさえ入閣待機組が多いからダメ?しかし、これもまだ日本に帰国できない被害者の方々には気の毒ですが、もはやさらなる進展へのチャンスを逃してしまった様な気がしてならないです。



長くなりましたが、結局全5回となってしまった「安倍晋三 沈黙の仮面」もそろそろ締めたいと思います。拉致問題については蓮池透氏著作「拉致被害者たちを見殺しにした安倍晋三と冷血な面々」も併せて読んでみたいとも思いますが、色々知らなかった事実も知って、本書とは逆に甘く評価したらしい著者の過去作は知りませんが、安倍総理の人間性も含めたこれまでの半生を知るには最適の書だと思います。本書が世に出たのは丁度2年前の2015年11月12日の事で、安倍総理の大学の先輩なギレン総帥の誕生日であり、終盤で日本の右傾化にせめてもの抵抗も示してきた姿も描かれていた天皇陛下の即位の礼が行われた日でもあり、その後も色々な事件が起きていますが、そういうのまで触れるとまた長くなってしまうので割愛します。何だかんだ言ってもこの人以上に世界の首脳とも渡り合える人はいなそうだし、おそらく安倍氏は高い確率で2021年まで総理であり続けるのだろうけど、野上氏にはその時にでもまた本書の続編を書いていただきたいものです。憲法改正とか政治家としての実績にも拘りたがる安倍総理と日本に見えてくる未来は何か?憲法改正も押し付け憲法論ではなく、もっと客観的に特に9条が果たしてきた役割を評価する事が絶対的前提の一つで、それを無視するのは梯子を使わないで屋根に登る様なもの、あまり明るい展望とかは見出せませんが・・・・・・・・・・

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