元軍事委員会副主席の完全失脚と2015年上将(大将)昇進式
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150801-00000004-jij-cn
副総参謀長ら10人を上将に=中国軍
時事通信 8月1日(土)0時11分配信
【北京時事】新華社電によると、中国中央軍事委員会は31日、人民解放軍の王冠中副総参謀長、殷方竜総政治部副主任ら10人を上将に昇格させる式典を北京で開催した。
習近平中央軍事委主席(国家主席)が命令状を授与した。
毎年7月に人民解放軍は上将の昇進式を行っています。you tubeでの動画も目にしたけど、深緑色の人民服を着た国家中央軍事委員会の主席(1993年以降は国家主席が共産党の総書記共々兼任)が敬礼し、手を差し出した昇進者と握手した後、命令状を授与、再び握手しながらマスコミの方に向いて・・・・・・と言った感じで、軍事委員会の副主席及び委員も同席します。
人民解放軍の序列は、まずトップクラスが軍事委員会の主席・副主席・委員で、それより下は分級単位というのがあります。その分級の中で最高なのが正大軍区級で、その後副大軍区級、正軍級、副軍級、正師級、副師級・正旅級・・・・・・(以下省略)と続きます。副軍級までが将官ポストです。軍事委員会の委員まではほぼ必ず就任時には上将(大将)まで昇進していますが、各分級はそれ相応のポストに就任させても、階級はしばらくそのままで就任後2年前後で漸く昇進する事が殆どです。7個ある軍区司令もそうで、師長→軍(集団軍)参謀長または副軍長→軍長→軍区参謀長→(軍区副司令員)→軍区司令等が主な昇進パターンです。
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人民解放軍は一度1965年に階級制度を廃止した後、1988年に復活させたので同年~昨年の2014年までを範囲としましたが、これを見て分かる事をざっと述べると・・・・・・・
かっての帝国陸海軍も大将昇進は中将現役服務年数が6年以上ある事等が条件で、東条英機は内閣総理大臣になったから足りなくても特例で昇進できたのですが、人民解放軍も中将を4年、その内軍区司令または政治委員を最低2年以上は務めるのが基本的な上将への昇進条件です。階級制度が復活したばかりは上将はそんなにいません。①特に1990~91年にかけては上将が1人もいない状態が続きました。②しかし、1993年に江沢民が総書記・国家主席・共産党及び国家軍事委員会主席4職全てを兼ねた途端、一気に増加しました。以降上将の昇進者自体、年10人見られる事もしばしば見られるようになります。
失脚した徐才厚も、昇進式前日に党籍をはく奪された郭伯雄も②の時期に昇進したのですが、③2002年・2007年・2012年と党大会が開催される年に軍区司令の交代が目立ちます。大体最大で10人ぐらいです。ちなみにソ連・ロシア軍の場合は軍管区司令官は基本的に大将だったのですが、独ソ戦等で何人も元帥が登場したので、戦後1960年頃までは誰かしら1人は元帥の軍管区司令官がいました。その後は何年か務めた古株が在任中に上級大将に昇進するパターンが目立ったのですが、1970年代前半のブレジネフ政権期前半までが4人前後、同政権後半期が6・7人ぐらい上級大将の司令官がいました。丁度ベトナムやアンゴラ、エチオピア等第三世界等にも影響を及ぼしていて、共産革命の世界輸出が軌道に乗っていた頃です。ところがゴルバチョフ政権になると減り始め、1989年にはとうとう一人もいなくなりました。上級大将の司令官が再登場したのは既にソ連が崩壊して、ロシア・プーチン第一次政権となっていた2003年の事で、この年はイラク戦争が起こり原油価格が上昇して国力回復に拍車をかけた年です。しかし、世界金融危機が起こった2009年には再びいなくなり、翌2010年には連邦軍再編で軍管区自体さらに4個に減りました。もはや上級大将の司令官は出てこないでしょう。
まあソ連・ロシア軍の話はここまでにして。これで現役上将は38人、内軍管区司令または政治委員の上将は12人となりました。おそらく過去最多クラスでしょう。特筆すべきなのが武装警察の司令員である王宇でしょう。昇進条件については前述した通りですが、2012年に中将となったばかりでまだ満たしていなかったのに3年で上将となりました。実は彼は、12集団軍・31集団軍の軍長や上海警備区の司令員等習近平の地盤、上海を含む南京軍区が管轄している上級部隊の指揮経験が豊富なのです。その他面々は鄭衝平は南京軍区政治委員だし、宋普選もやはり南京軍区副司令を務めた事があります。王冠中は汚職を取り締まる中央検査紀律委員会の委員を務めた事もあって、汚職撲滅を権力基盤強化の正当付けに利用している習にとってはこれまた打ってつけな人選だっただろうし、殷方龍は総政治部副主任ですが、長く政治畑で活動しているのが注目されるべきです。
人民解放軍では軍事委員会委員以上になれなければ上将でも65歳を迎えると定年となります。今回の昇進者では国防大学学長である張仕波は1952年2月生まれですので微妙なのですが、他の9人は2017年の今度の党大会でもまだ定年を迎えません。殷はおそらく総政治部の主任に昇格するかもしれませんが、彼らの内半分ぐらいは委員になれるかもしれません。そしてさらに習は2022年に引退予定ですが、その2017年の党大会でまた、2022年の党大会で新たに就任する副主席候補たる上将昇進者が出てくるに違いありません。と言うか、昇進もそういう権力闘争に利用するぐらいなら、いっその事一級上将を復活させて委員以上は全員充てて、軍区司令または政治委員は就任と同時に上将にすれば良いのにですが、1965年までに存在した大将(上級大将)と同格で、元帥と大将(共にNATOの階級符号ではOF-10であろう)は戦時に高級指揮権を握った将領のみに与えられる階級だからと尤もらしい理由付けて、結局6年で廃止にしちゃったんだと。台湾も本来元帥と同格だった筈の四つ星一級上将を戦時のみの階級に限定するようにしたし、シンガポールにいたってはそもそもどうも最高階級はどうやら中将とどうも中華系の国の軍隊は特に最近は四つ星将官がなかなか出てこない様で、勿論中将扱いされた事にいじやけて星を勝手に増やした誰かさんみたいに気にはしていないでしょう。元々共産圏の国は階級デフレで例外は将官が1600人以上いる朝鮮人民軍ぐらい(しかし、三つ星上将以上は100人強程度である。中将が500人、少将が1000人程度いるのであろう)変に過去からの「権威」に拘って、自分達を低く見積もっているような気もしますが・・・・・・いずれにせよ、これで更に習がホントに中華人民帝国五代目の皇帝として絶対的な権力をますます確かなものにしていけるかは不透明でしょう。必死に日本等の外敵を煽って不満を外に向けさせようとしているのはその日本の安倍政権以上ですが、経済成長率の低下や環境破壊、杜撰な品質管理、深まる周辺国との軋轢等問題点は山積みでそれが好転しているとも言い難いのだから。
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