« 「NEWスーパーマリオブラザーズwii」とその方向性等 | トップページ | 今なお精力的な上村愛子 »

2010/02/08

「中原中也」という題材を扱いきれなかった若き日の浅田弘幸

日本を代表する詩人の一人である中原中也、その生涯は「知ってるつもり?」でも取り上げられた事がありましたが、商標登録するかしないかで騒がれたのは記憶に新しい所であります。そんな彼の世界を「漫画」という形で表現しようとしたのが、現在「テガミバチ」を連載中である、当時まだ20代前半の浅田弘幸氏でした。

その作品は「眠兎」と言いましたが、中原中也の詩を引用しながら、眠兎と時雨という2人の主人公を軸に物語が展開されます。簡単に言えば、自分と周囲との所謂「ズレ」に苦しみ、自殺しようとした所をとめようとした母を誤って刺殺してしまった過去をもつ眠兎、そしてそんな彼の過去を知り余計「近親憎悪」に陥っていたが、実は憎んでいた父親を殺せず、自殺も出来なかった「悔しさ」から「引け目」を感じ、彼のようになりたがっていた時雨の「心の葛藤」はそれなり以上に掘り下げられていたと思います。

しかし、だからと言ってこの作品に惹かれたものがあったかどうかはまた「別」です。何故「別」なのかと言うと、それは時雨のキャラクター、確かに彼が家庭環境に恵まれないまま生い立ちを過ごしたのは気の毒だったと思います。そう言えば、某ロボットアニメでも、教育評論家のクセして自分の体裁しか考えないで、息子を阻害、夫に一喝された主人公の母親がいましたが、彼の父もまさに「現代の駄目親そのもの」でした。某ロボットアニメ主人公の母共々「教育云々についてたいそうらしく語る前に自分を客観的に評論した方が良いんじゃないかね?」と突っ込みたくなるような親でした。

そうした酌量の余地はあった。しかし、結局は、上から目線な言い方になってしまうけど、「自分がこの世で一番不幸だと思い込んでいるのが惨めったらしい、粋がったガキ」で残念ながら共感とかは全く出来ませんでした。最後は元仲間の不良達もぶちのめして、事故で目が刺さって失明の危機までさらされた粋花も無事退院、眠兎との葛藤も解け、父も久しぶりに帰ってくるから目出度し目出度し等とは素直に思えない。特に某カップルの彼氏、全く無関係だったのに眠兎との葛藤等からくる鬱憤の捌け口としてボコボコにぶちのめされたのは凄い理不尽だったと思うけど、あの後どうなったのかね?親父か粋花が、DR.ワイリーばりに(苦笑)必死こいて土下座して何とか示談に持ち込んでもらったのかね?

それはともかく、確かに浅田弘幸氏、公式ブログでも語っていたけど、中原中也に思い入れがあるのはよく分かります。でも、繰り返し言うように主要登場キャラの心情とか掘り下げはなされていても、それがキャラや作品そのものへの共感には残念ながら繋がらなかった。2巻の巻末では、某担当は彼を天才などと持ち上げらていた(確かにそうなる素質はあったとは思いますが)けど、残念ながら私から見れば、力量不足だったというか、「中原中也」という「題材」を扱いきれなかったまま不完全燃焼してしまったのは否めなかったですね。そしてこの漫画の連載終了から20年近く経った今も、結局彼は分不相応に作品が持ち上げられてしまっている(確かに当時も低くは無かった画力は大きく向上したけど・・・・・・)のだけど、残念ながらこれも高評価は難しい作品の一つであります。

|

« 「NEWスーパーマリオブラザーズwii」とその方向性等 | トップページ | 今なお精力的な上村愛子 »

文化・芸術」カテゴリの記事

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1159637/33301078

この記事へのトラックバック一覧です: 「中原中也」という題材を扱いきれなかった若き日の浅田弘幸:

« 「NEWスーパーマリオブラザーズwii」とその方向性等 | トップページ | 今なお精力的な上村愛子 »