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2009/11/11

旧東欧にとってのソ連=ナチスドイツ以上の侵略者

http://www.asahi.com/international/update/0730/TKY200907300394.html

【モスクワ=副島英樹】第2次世界大戦の開戦から70年のこの夏、原因や評価をめぐってロシアと一部の欧州諸国が火花を散らしている。

 「ソ連をヒトラーのナチスドイツと同列に扱おうとする試みはロシア国民への侮辱であり、受け入れ難い」。ロシア上院は18日、「責任をソ連に負わせる動きがある」として、こんな声明を採択した。

 旧ソ連バルト3国のリトアニアで7月3日、欧州安保協力機構(OSCE)の議会が人権と自由に関する決議を採択。その中に「8月23日をスターリニズムとナチズムの犠牲者追悼の日にする」「20世紀の欧州はナチスとスターリン主義という二つの全体主義体制を経験した」などの記述があることに反発した。

 独ソは1939年8月23日にバルト3国でのソ連の権益黙認の代わりに独のポーランド侵攻を認める条約を締結。70年がたつのを機にリトアニアなど旧共産国主導の決議に問題の記述が盛り込まれた。

 上院の声明は「39年に始まった第2次大戦は20世紀の最大の悲劇だが、主因をつくったのはナチスドイツの指導層だ」と指摘。「戦争が起こった現実の原因について修正を加え、ソ連にも責任を負わせようとする試みは、平和のために高い犠牲を払った我が国民への侮辱だ」としている。

ソースはちょっと古いですが、ロシア人の歴史認識不足が伺える出来事だったと言えます。「ナチスと一緒にするな」?とんでもない。結論から言えば、旧東欧でのソ連はまさに「ナチスドイツ以上の侵略者」と評するに相応しいものでした。ロシアでは「ソ連は欧州をファシズムから救った。」と過大評価しているらしいですが、詭弁以外の何物でもないですね。

そもそも第二次世界大戦勃発はナチスと、ナチス以上の全体主義だったソ連の、独ソ不可侵条約締結もその原因の一つだったのですが、そのドサクサにまぎれて、ポーランドの東半分を占領、カチンの森事件という虐殺事件を起こして、しかもナチスのせいにしようとしたり、冬戦争でフィンランドを攻めたり、バルト三国を強引に併合した国は何処の国ですか?しかもフィンランドは、爆撃について、モロトフは「パンを投入しているのだ。」と言い訳こいたけど、スターリンがあの大粛清で高級将校の実に約3分の2も殺したから結局無能な司令官しか残らないで失敗したときた。ここまで殺して弱体化しない方がおかしいのだけど、当然と言うか、ヴォロシーロフが逆ギレしたくなる気持ちも分かります(苦笑)

そして大戦後、チトー元帥がほぼ自力でナチスを追い出したユーゴスラビア以外の東欧諸国を衛星国にしたのだけど、そのマルクス主義の理想とはかけ離れたソ連型社会主義を押し付けたせいで、ソ連自体もそうだったけど、ハンガリー動乱やプラハの春弾圧等を経た1970年代以降第3の産業革命というべき情報技術の革新が殆ど起こらなかったこともああって、経済水準で西側との差は次第に開いていった。東ドイツは、ベルリンの壁等で反ソ運動を押さえつけ、「東欧の優等生」と呼ばれたほどだったけど、それでも経済水準は西ドイツの3割ほどしかなかった。そしてソ連自体、そうした「勢力圏」等を維持しきれなくなって経済破綻、崩壊していったわけですが、東欧諸国はその後も、政治的には確かに共産主義と決別したけど、経済的には市場経済化等必ずしも円滑にはいかず、しばらくマイナス成長に悩まされた。チェコ等はもともと工業化が進んでいた国で、2008年の購買力平価換算GDPは2万5千ドル強だったけど、もしソ連に邪魔されないで資本主義経済下で国づくりを進めていたら、日本並の経済水準に今頃達していてもおかしくなかったと思います。それだけでなく、ベラルーシはチェルノブイリ原発事故の後遺症を背負う事になったし、バルト三国は残留ロシア人の問題を今でも抱えている。フィンランドもやはり日本同様現在もカレリア等領土問題を抱えている。現在も中東欧及びその近隣地域に大きく悪影響を及ぼしているのは間違いなくナチスドイツではなく、ソ連です。ソ連は間違いなく、旧東欧諸国及びその国民に対する加害者だった。

ロシア国民からすれば、第一次世界大戦では敗北したドイツからの侵攻を跳ね返した、第二次世界大戦における誇り高き戦勝を傷つけられた気分であるのは理解できます。そしてその大祖国戦争に勝利したのは、スターリンによる5カ年計画等の工業化による成果であったのも否定しません。しかし、バーナード・ショー等の西側知識人は見落としてしまったけど、それは強制的に、無償で奴隷同然に労働させられた人達の犠牲の上に成立したものであって、決して社会主義が正しかったわけではない。しかもそれで得られた富は殆ど一般の国民には還元されず、スターリンをはじめとする共産党の幹部達が独占した。

大祖国戦争の勝利にしたって、スターリンが赤軍大粛清で高級将校等を見境もなく殺しまくった結果、無能な司令官しかいなかった序盤戦は大敗ばかりだったけど、自軍兵士による射殺、疎開禁止等も相まってその為に払った犠牲は決して小さいものではなかった。過去ログでも言いましたが、大粛清が沈静化し、独ソ不可侵条約が結ばれ、第二次世界大戦が勃発した1939年時のソ連の国力はアメリカの50%弱(1990年換算購買力平価GDPによる)でしたが、結局1991年の崩壊までソ連は1939年当時の国力差までもすら、挽回する事が出来なかった。結局社会主義・共産主義は、それ自体のイデオロギーに縛られて、「国が健全に発展する為には『まず国民が肥え太らなければいけない』」という、政治のイロハのイを忘れてしまったから衰退を余儀なくされてしまった。

結果的にソ連に幕を下ろすこととなったミハイル・ゴルバチョフは、「知ってるつもり?」で自身が取り上げられた際のインタビューでも「この『冷戦』の時代は絶対に教訓としなければいけない。」と言うような事を言っていましたが、悲しいかな、現在のロシア人にはこうしたゴルバチョフのメッセージが殆ど伝わってないのだと改めて思います。そしてまた国力回復したかと思ったら、確かにBRICSの中では最も先進国に経済水準が高いけど、かっての被害者、ポーランド・チェコ・スロバキア・ハンガリー・バルト三国にはやや及ばない。そこで世界同時不況でロシアは最も痛手を被った国になってしまったのだけど、再三言うようにそういう「伝わっていないメッセージ」こそが現在のロシアの大きな問題点の一つなのだと思います。そうでなければ、旧東欧の「衛星国化・ソ連型社会主義化」等を「解放」と称して正当化できるはずなどないのです。

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